船員さんの制服姿は凛々しいものです。
私が船乗りになった理由のひとつでもあります。
濃紺の上等なサ-ジの生地でフルオ-ダ-です、テ-ラ-のおじさんが、新入社員のひとりひとりをメジャ-で採寸していきます。
制帽のサイズも計ってくれました。
そして約3週間後には自宅に仕立てたばかりの制服が届きました。
ダブルの上着に錨のマ-クの金ボタンが付いています。
袖には金のモ-ルが一本巻いてあります、そしてその下には通信士である印の細い緑色の帯が付いています。
これは3等通信士を意味するものであります。
航海士は、金のモ-ルだけですが、機関士は紫色、通信士は緑色、パ-サ-は白色、ドクタ-は確か赤色だったと思いますがどのパ-トの職員かわかるように金モ-ルの間や下側にこのような色の帯が巻かれていました。
これも海軍の名残だとか何かの本で読んだ記憶があります。
そんなわけで、これからこれを着て仕事をするのだなと思うと、とても嬉しくて嬉しくて...
しかし現実はそう思うようにはいきません。
実際に船に乗るときはス-ツ姿です。
そしてワッチの時は船内服といって、いわゆる作業服であります。
紺の制服は一度も着たことがありません。
唯一着たのは、初めて制服をいただいて、嬉しくて家で試着をした時の一回だけであります。
本船のブリッジデッキで・アルゼンチンのロザリオ港にて。
ご覧のとおり船内服です。寒いときのデッキでの作業では防寒服(ジャンパ-)を着ます。紺色のオ-バ-コ-トはありません。
乗船、下船は背広で、船内では船内服で、そして制服を持っていくのは停泊備蓄の時だけにせよ!
これは乗船前の研修で教えられたことでありまして、いわゆる新米が船内生活を波風立てずに過ごせるように、との先輩船乗りからのアドバイスでした。
以前にも書きましたように非常に封建的な社会であるにもかかわらず、軍隊ではありませんので、そこのところは社会人として先輩を立て、決して人を役職等で見下したりしてはいけない、というようなことを言っていたのでしょう。
今思うと、三光汽船という会社のカラ-が出ていて、良かったのではないかなと思います。
憧れの制服を着てワッチという夢はかなえられませんでしたが...
続きはサントス港での出来事です...