本船「月光丸」は、次の航海をレッドシー(紅海)のヤンブーという港に向けて
出発することになりました。
「
本船」って言いますよね船員さんは。
この「本船」と言うのは、「日本の船」を略して言う、という説と、「この船」
という意味の「本船」である、という2つの説があります。
どちらが、正しいのかはいまだに分かりませんが、とにかく自分の乗っている
船のことを船員さん達は、こう呼んでいます。
さて、話はもとに戻りますが、「ヤンブー」という港に行くらしいのです。
アラビア半島をはさんで、どちらが紅海で、どちらがペルシャ湾だろうか?
もう一度、地図を見て良く確認しておこう! やっぱりそうだ、このスエズ
運河につながっている西側の海が紅海です。
これから、ここ、鹿児島は喜入港からやく1カ月をかけて本船は、紅海にむけて
旅立つのです。
平均速度は、約9ノット(1ノット=1ノーティカルマイル=1カイリ=1852m)
早い話が、1時間に約17km程進みます。
自転車をぼちぼち走らせているようなものですね。
さて、出向準備も慌ただしく、局長さんの手伝い(いや、邪魔)をしているうちに
本船は、喜入港を出帆していきました。
「次席さん、TRいれといてくれ」局長さんが、言いました。
「JOS JOS DE JFCH JFCH NW QTO キイレ K」
「JFCH DE JOS R TR NIL TU SK ・・」
[JOS DE JFCH TU SK・・」
[TU・・」
「・・」
と、まあこんな風にやれば良いのですが、何せ初めてのこと、局長さんにいろいろと
教えてもらいながら、やっとの思いでTR(船舶の動静を海岸局に知らせる業務報)
を入れることが出来ました。
ここでちょっと説明しますと、JOS・・・・長崎無線局(NTT)
JFCH・・・月光丸の呼び出し符号
QTO・・・・Q符号です。「出港」の意味
NIL・・・・着局あての電報は、有りません。
後は、アマチュア無線と同じです。ちゃんと、最後の・・(ちょんちょん)も
やりまっせ!
無事、TRをいれて一服していると、キャプテンが無線室に入ってきました。
「局長さん、会社に電報入れといて、はいこれね」と、電報用紙を置いていきました。
この電報、てっきり局長さんが打つと思っていた私は、無事TRを長崎無線局に
入れることが出来たので、すっかりと一仕事終えた満足感に浸っておりました。
しかし、しかし現実は、厳しいものです!
これから通信士として、初めての電報を送信することになるのです。
それもこんなに早く来るとは思ってもいませんでした...
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・続く