へっぽこ通信士航海日誌その8

国家石油備蓄政策 というものがあります。

これは不測の事態に備えて陸のタンクや洋上のタンカ-に原油を積んで備蓄しておくものです。
48万トンのタンカ-に原油をいっぱい積んで硫黄島西方の海域を3ヶ月間漂泊するのです。

本船は、三光汽船仁光丸、総トン数約48万トン
船首から船尾までの長さは約380メ-トル、幅、約80メ-トルの巨大タンカ-であります。

漂泊 とは、海の上で船が当てもなくプカプカト浮いている状態を思い浮かべてください。

3ヶ月間、決められた海域からはみ出さないように、見張りをしてその海域に留まるのが仕事であります。

したがって、とても暇な毎日が続きます。
我々 無線部は毎日の気象電報や共同通信社のFAX新聞、天気図を受信するのが主な仕事となります。
その他、乗組員の家族への電話(KDDの運用する短波公衆無線電話局でJBO-TOKYO RADIO)
の取り扱いも行います。

このJBOは限られた回線をそれを上回る船舶が予約を取るべく呼び出しをするので、まさにDXをコ-ルする
アマチュア無線のパイルアップそのものです。
幸い私はハムでパイルアップ大好きでしたので、比較的早い順番でこのリストの載ることができました。

話を元に戻しますが、洋上備蓄では1に食事、2に食事、3,4、がなくて5に食事と言っても良いほど娯楽がありません。
食事とともに楽しみは、やはりワッチの後の一杯です。

酒には肴も必要です。
この酒の肴はデッキから釣り糸をたらして調達します。
でかいイカはもちろんのこと、船尾あたりではメジナ、オヤシさんはよくカツオを釣って裁いてくれました。

洋上備蓄は内航扱いです。
乗組員の酒やタバコにすべて税金がかかります。
つまり免税品の酒やタバコはありません。

したがって普段はジョニ-ウオ-カ-やブランデ-を嗜む船員さんも焼酎をたくさん積んで沖にでます。
特に 薩摩白波 という芋焼酎が人気でした。
この焼酎は、芋から出来ているので、最初は匂いが気になるのですがすぐになれてしまいます。

ワッチの後のお友達はいつも芋焼酎!
みんな芋臭い息でカタフリをしています。

3/Oと
サ-ドオフィサ-の鈴木君(左)と私(右) (彼の自室で)

しかしながらタバコに関してはいかんともし難く、税金をたっぷり含んだタバコを吸っておりました。

ビデオもしかり、出航時に新しいビデオが積まれますがせいぜい10巻ぐらいです。
どの映画も何回も見ています。

どこの場面でどの俳優がどんなセリフを言うのかも分かります。
それでもやっぱり又、見てしまうのです。

そして同じところで泣き、同じところで笑うんです。

3/Eと
サ-ドエンジニアの本林君(右)と私(左)  (彼の自室で)
鈴木三等航海士と本林三等機関士と私は同年齢で船内生活も楽しいものでした。

そんな生活を3ヶ月間、やっと船は港に入ります。
そして約3日間の補給後、また漂泊海域に戻っていくのです。

これを合計3回、9ヶ月続けてやっと下船、娑婆に戻って次の乗船命令を待ちます。

次はバラ積み船に乗りたい!
会社にも希望を出し続けています。

続く…



同じカテゴリー(へっぽこ通信士航海日誌)の記事
タンカーの無線室
タンカーの無線室(2012-01-17 16:30)

上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。

写真一覧をみる

削除
へっぽこ通信士航海日誌その8
    コメント(0)